税理士のなかやまです。
2020年も半年が過ぎ7月になりました。
依然コロナ禍は続いており、日本でも上場企業のレナウン、
海外ではエンターテインメント集団のシルクドゥソレイユが経営破綻したりと、コロナ倒産が紙面に出たりしていますね。
皆様の得意先でもコロナによる急激な業績悪化で売掛金が回収できないなどはないでしょうか?
売掛金が回収できないことを会計では「貸倒損失」と言いますが、
実務上貸倒損失が発生すると(決算書に載っていると)税務調査のリスクがググッと高まります。
それは会社によって貸し倒れの基準が不明確だからです。
例えば、「ずっと帳簿上に残っていたけど、今期利益が出たから貸し倒れにして消してしまおう」とか、
「請求忘れで今さらもらえないし、貸し倒れにして消そう」などがあります。
実際に他の税理士・会計事務所から弊所に移ってきたお客様の決算書を確認していると、
ずっーーーと前から売掛金が残りっぱなしと言うケースがたまにあります。
そのままにしておいても仕方ないので、無理やり貸倒損失で消すしかないのですが、
時効にかかっている場合は経費としては落とせません(売掛債権だとわずか2年で時効です!)。
※税務上の消滅時効については通達にも記載がないので、民法を援用することになります。
しかし実際には税務上の貸し倒れは非常に要件が厳しく、実務的には次の3つの方法しかありません。
1 法律上の貸し倒れ
2 事実上の貸し倒れ
3 形式上の貸し倒れ
順に説明していきます。
1 法律上の貸し倒れ
具体例で言いますと、相手方が倒産・破産などをした時です。
そりゃ倒産・破産されたらまず回収は不可能ですよね。
ちなみにこの法律上の貸し倒れは通常債権者集会なども開かれますので
「破産手続きが終結した事を知らなかった」と言うのは通用しません。
またこれは気持ち的にはやりたくないと思いますが、「債権放棄の通知を相手に出す事」も法律上の貸し倒れとなります。
2 事実上の貸し倒れ
具体的には「債務者の資産状況、支払能力からみて全額が回収できない事が明らかである場合」です。
ちなみに一部でも回収できる場合はダメです。
これ、立証責任は債権者側にあります。
債務者の資産状況や支払い能力がどの程度かを調べるのは相当困難かと思います。
実際は、取立費用やその労力など総合的に勘案しての判断とはなりますが、まあハードルがかなり高いのは間違いありません。
3 形式上の貸し倒れ
実務的にはこれが一番多いです。
内容としては取引停止後1年以上経過したら1円だけ残して(備忘記録)残りを貸倒損失に落とすというものです。
例えば令和2年4月1日に100万円の売上があったところ、
令和3年4月1日になっても1円も入金されなかったら、999,999円を貸倒損失にするというものです。
残った1円はそのまた1年後に消してしまいます。
この場合、「取引停止・最後の支払い・最後の支払期限」のうち最も遅いときから1年以上経過した場合有効になりますので、
少しずつ入金があるような場合は使えません。
税務調査における貸倒損失のポイントは事実認定によるところが大きいですので、
督促や相手方の状況など、いかに客観的な事実を記録しておくかが大事となります。
そういえば7月になったのにコロナの家賃補助の具体的な手続きが発表されていませんね・・・。どうなっているんだか。
それでは今回はこの辺で。