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鬼滅の刃と仕掛原価

先日、最近流行りの「鬼滅の刃」の映画を見てきた税理士のなかやまです。
今回も全集中でメルマガ執筆中です・・・。


実写・アニメなど映画も様々ですが、企画立案、キャスティング、撮影・編集など
製作期間は短くても半年、長いものは数年にもなるそうです。

映画の様に公開まで長い時間がかかるものは、先に経費がたくさんかかり、
その後公開することにより収益が計上されることになります。
例えば3月決算の映画会社で、製作期間が10月から翌年の9月までかかり、10月から公開されたとします。
この場合、10月から3月までにかかった費用は決算上経費とならず、前払いの処理となります。
税金の計算では、原価は売上と対応させなければならず、売上が翌年10月からと言う事であれば、
その時にようやく経費計上出来るのです。

この前払いしなければならない経費はいわゆる売上に直接ひもづく「原価」です。
映画会社でいえば、出演者の人件費や撮影・編集費用等が当てはまります。
つまり10月から翌年3月までにかかった上記の経費は全て「仕掛原価(しかかりげんか)」として、
前払処理となり経費から除外されます。
そしてその後公開された翌期において経費処理されます。


文字にするとなかなかイメージが付きにくいかもしれませんが、
これは何も映画会社の様な大企業に限った事ではなく、皆様にも当てはまる事なのです。

例えば12月決算の法人や個人事業主で考えてみましょう。
小売・卸売業などであれば、12月に仕入れたものを1月以降に販売することはよくありますよね?
この12月末に売れていない在庫、いわゆる「棚卸在庫」ですがこれらも仕掛原価となります。
また飲食業であれば12月に食材や飲料など仕入れて、それを調理したのが1月であればこれも同じく棚卸になります。


建設業や製造業であれば映画会社の様に工期が長くかかるものも多いでしょうから、イメージがしやすいかもしれませんね。
建設業や製造業の場合、材料などが期をまたいで使用されるものはわかりやすいかもしれませんが、
現場の人件費などもおなじ扱いになります。

例えば、12月に受注を受け、2月に引き渡しの工事があったとします。
この場合、12月中の材料・外注費はもちろん、
自社の現場の作業員の人件費も全て「仕掛工事」として経費から除外されます。
外注費などは現場ごとに細かく明細がわかるでしょうが、
月給制の自社人件費などはどの現場にいくらかかったかと言う現場毎の原価台帳がないと
正確な仕掛工事の算出が難しくなりますので、現場台帳は作成するようにしましょう。


業種により「棚卸」「仕掛工事」「仕掛品」など呼称が様々ですが、内容は全て同じです。
ちなみに税務調査の際にはどの業種でも、
棚卸や仕掛に計上した数字の計算根拠は必ず聞かれますので、ご注意ください。


この仕掛の逆の話になりますが、
売上の入金も工事が終わるまでは単なる「前受金」ですので、収入ではありません。
長期の工事などでは着手金・中間金・完了金など複数回入金がありますが、原則は完了時に売上計上となります。
「原則は」と言うのは、出来高で請求する場合や工期が1年を超える場合などの例外もあるわけで、
それはまたの機会にお話しします。

ちなみに弁護士の着手金の様に、返還を要しないものについては受任時に売上計上となります。
売上までに複数回入金があるような場合は契約書がどのような条件になっているのか今一度確認をお願い致します。


さてここまでの話で、売上が計上されるまでにかかった支出は経費とならないという事は理解頂けたかと思いますが、
あくまで経費にならないのは売上と直接ひもづく「原価部分」のみです。
この「売上にひもづく」とはどういう事かといいますと、
売上があがればそれに比例して増える経費と考えて頂いて構いません。
飲食店であれば売上が増えれば仕入れの材料が増える、
建設業であれば現場の職人の人件費や外注費・材料費が増えるというイメージです。

例えば人件費でも現場の社員ではなく、会社の事務職員の給与や事務所の家賃や水道光熱費、
通信費などは売上に直接ひもづく原価ではありませんので、仕掛に計上する必要はありません。


ご自身の事業の原価はどの部分なのか、今一度おさらいしてみるのも良いかもしれませんね。

それでは今回はこのへんで。

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