おはようございます、税理士のなかやまです。
緊急事態宣言解除を待っていたのは一般人だけではありませんでした。
10月になると同時に税務署から税務調査依頼のアメアラレ・・・。
既に毎週のように税務調査の予定が入っています(汗)。
秋は食欲の秋、スポーツの秋、税務調査の秋と言われるように(?)
昨年少なかった分、今年はその余波がすごそうです。
第2波、第3波が来ない事を祈りってます。
さて先月の新聞で、千葉のコンサルティング会社が7年間で
20億円の脱税指南をしていたと記事に載りました。
しかもこの事件に、国税OBの税理士3名も関与していたとか(汗)。
ご存じない方の為に、事の経緯を簡単に記載します。
コンサル会社の関与先のA法人(黒字)とB法人(赤字)があります。
A法人はB法人へ架空外注費を発注し、その費用をB法人に振り込みます。
B法人は手数料を抜いて、「現金で」コンサル会社の社長に渡します。
コンサル会社も手数料を抜いて、現金でA法人に戻します。
金額は適当ですが、具体例で説明すると、
A法人は黒字1億円(税率を便宜的に35%とすると、法人税は3,500万)、
A法人はB法人へ架空外注費1億円送金・・・A法人は利益ゼロになり税金はゼロ
B法人は手数料500万を受取り、9,500万をコンサル会社に渡す。
コンサル会社も手数料500万を受取り、A法人へ9,000万戻す。
あららびっくり、本来なら3,500万の納税が発生し、手残り6,500万になるところ、
9,000万も手元に残っちゃいました!しかも簿外=社長のポケットマネーとして!
こうしたやり取りをコンサル会社の社長及び国税OBの税理士が主導したとか。
今回の脱税の手口ですが、
「現金」でやり取りしたからバレないと思ったのかもしれませんが、
税理士からすると「そんなわけない!」と言う感じです。
「現金だからバレない」「赤字だから調査はない」と言うのは都市伝説レベルの話です。
確かに「本当に」赤字の法人であれば、調査に入って間違いなどを発見したとしても
赤字幅が多少少なくなる程度かもしれませんので、調査選定にはなりにくいです。
※マイナス1,000万の赤字の会社で500万の売上計上漏れがあっても、
マイナス500万になるだけなので、税額に影響はありません。
但し、「本当に」赤字かどうかと言うのは、
実際のところ会社に行って帳簿をきちんと調査しなければわかりませんよね。
まして今まで調査を受けたことがないとか
何年も調査を受けていないと言う場合はなおさらです。
税務署からすれば、その赤字が本当の赤字なのか、
売上や経費をごまかした赤字なのかは
決算書だけ眺めていても全く分かりません。
その為、赤字だから来ないと言うわけではありません。
会社の帳簿は複式簿記ですので、現金でのやり取りも必ず歪みが出てきます。
それに多額の現金取引であればあるほど、
通常は振込でやり取りするのになぜ現金なのか?と言う不自然さもあります。
現在は消費税も10%となり支払う額もかなり増えてきています。
法人税は黒字でなければ発生しませんが、
消費税は「預り金」なので赤字法人でも納税が発生します。
また実際の税務調査では印紙税や給与などの源泉所得税の調査も同時に行われます。
その為、赤字法人で法人税が取れなくても、それ以外の税金が見込めるような場合は
当然に調査選定に挙げられる可能性はあります。
赤字法人でも、売上高が高くて消費税の納税額がそれなりにある場合などは要注意ですね。
税務署はKSK(国税総合管理システム)と言うシステムで
「同業他社と比較して」目立った異常値がないかと言う事も調べます。
税務署は業界平均が大好きです。
例えば、ある支払いが本当に事業に必要な支出であったとしても、
表面的に同業他社と比較すると、他社より多いかもしれません。
そういった事があると、
「いっちょ会社に調査行ってみるか!」と言う事になるのです。
税務署は日々、日本全国からの決算申告情報を取得できますが、
我々が同業他社の平均値などを把握することは、容易なことではありません。
各種統計の発表などである程度目にしたりすることもありますが、
統計調査・集計・発表を考えると、数年後に発表されることもザラにあります。
税務調査は最低でも3年間さかのぼって調査されます。
いざ調査に入られた時、慌てないように日々の処理をきちんとしていきたいところですね。
それでは今回はこのへんで。