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伝統技術を活用した異分野との戦略的連携 

 中小企業が大手企業と組むことは大きなメリットがあります。

 「ウチみたいな小さい会社なんて、大手は相手にしてくれないよ・・・」

 そう嘆く前に、やるべき事・出来る事がないか考察してみたいと思います。

 京都には、長い歴史をもつ複合的な産業集積が形成されています。

 またそれだけでなく西陣織や京友禅など国が指定する17品目の伝統工芸品があり、これらの製造に関する伝統的な基盤技術の蓄積が先端技術を生む土壌となっています。

 京都のように伝統産業から先端産業までが複合的に集積する地域では、技術の相互補完性の可能性は広範に存在しています。

 しかし、それは一般的には可能性にとどまり、誰にも見えているものではありません。

 伝統技術を活用して新たな製品を開発し、マーケットを開拓する条件として、可能性にとどまっている相互補完性を現実的なものに転化する高度な戦略的思考が求められます。

 そして、伝統技術を活用して地域の中小企業が積極的事業展開を図るためには、そのときどきに構築された異分野の関連企業との戦略的連携が重要となるのです。

 伝統技術を活用して新たなマーケットを開拓するためには、既存の枠組みを超えた伝統技術に対する新たな用途開発が求められます。

 また、用途開発を行ううえでは、新たな用途に合わせた伝統技術に対する技術革新が求められます。

 これらの用途開発や技術革新を地域の中小企業1社が単独で行うのは困難です。

 このため、素材メーカーや、主力販売先などとの企業間連携や、大学や公設試験研究機関との産学官連携など異分野との戦略的連携によって用途開発やそれにともなう技術開発を推進し、連携先との間でWin-Winの関係を構築することで、技術の相互補完性を現実のものとしていく必要があるのです

 では、伝統技術を活用した異分野との戦略的連携においては、具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。

 そこで京友禅の型紙彫刻という伝統技術を活用し、新たな事業領域を次々に開拓していったA社の事例をみていきましょう。

 A社は創業以来、京友禅の型紙彫刻業を行っていましたが、1950年代には型紙彫刻技術を生かし、スクリーン印刷を用いる住宅用建材の技術開発に着手、1960年代には、建材に直接図柄を印刷した内装用化粧板の開発に成功しました。

 その後、多様な意匠性、耐水性、耐久性などの強みを背景に、造船・客船フェリー向けの内装材として販路開拓を実現しました。

 1970年代には、内装用化粧板の製造・販売を住宅関連分野へ、2000年代には、精密で均一に安定した印刷ができる技術を応用し、電気式床暖房用ヒーターをハウスメーカー向けなどに販売しました。

 A社がこのように事業領域を開拓できたのは、関連企業との戦略的連携がそのときどきに構築されたことによるものです。

 スクリーン印刷を用いる内装用化粧板の開発にあたっては独特の質感を生み出す塗料を、大手塗料メーカーとの技術提携によって開発しています。

 電気式床暖房用ヒーターについては、温度を自己制御できる特性をもつ発熱インクをインクメーカーと共同で開発しています。

 こうした塗料メーカー、インクメーカーなどの材料メーカーとの戦略的連携を通じて、A社では新製品につながるアイデアが入りノウハウが蓄積されていったのです。

(株)税務研究会 税研情報センター

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