おはようございます、税理士のなかやまです。
先日、鬼滅の刃の映画を見に行ってきました。
タイトルの「私、おこっているんですよ」はその劇中のとある場面でのセリフですが、
今日は、令和7年度の年末調整・確定申告の研修を受けてのハナシです。
税制改正自体は毎年のことで、直接皆様に関係しない内容もありますが、
ここ数年は、電子帳簿保存法、インボイス、さらに定額減税と毎年のように
皆様にも関係する内容が続いております。
さて令和7年はどうなのかと言うと、今年もあります・・・。
内容としては年末調整&確定申告にガッツリ関係してくる内容でして、
一言言わせてもらうなら、どこまで複雑にすれば気が済むのか?と。
実際、研修講師も言っておりましたが、「これまともに間違えないでできる人いるんですかね?」
と言うレベルです。
内容的には皆さまもご承知の「〇〇の壁」が崩壊した事が発端です。
以前は「税金なんぞビタ一文払いたくない!」と言う方は、
給与収入103万以下にしておけば何も問題ありませんでしたが、
昨今の物価高などを反映して、基礎控除・給与所得控除などが上がって、
123万の壁(所得税)となりました。
ちなみに住民税については基礎控除は変更ありませんので、
住民税も支払わないようにするには、
住民税の基礎控除等45万+給与所得控除下限65万の合計110万までにする必要があります。
まあ、これぐらいの改正なら良いのですが、令和7年からは基礎控除の上乗せ37万ができ、
基礎控除58万、給与所得控除の下限65万とあわせて合計160万の壁になりました
1 基礎控除
基礎控除は「基礎」と言っていますが、全員一律ではありません。
令和7年から58万にあがりましたが、所得が2,350万を超えると48万です。
さらに所得が高いと段階的に下がります。
控除は10万増えましたが、階段も1段増えたのでヤヤコシクなりました(汗)。
2 基礎控除の上乗せ37万について
令和7年から新設の内容です。
国税庁HPなどでは基礎控除95万などと書いてあります。
これは給与年収850万円以下の方が対象で、収入により階段が4段あります。
収入が少なければ上乗せが大きく、収入が高くなると上乗せが減ります(汗)。
ちなみに令和7・8年のみの措置で、
令和9年からは給与収入200万4千円以上の方は上乗せが無くなります。
期間限定&収入により変動するのだから基礎控除95万と言われると、
恒久的なイメージがあるので違和感があります。
3 給与所得控除
給与所得控除の下限が55万から65万になりました。
今までの給与103万まで無税・扶養と言うのは、
従前の基礎控除48万+給与55万の合計が103万なので、
それ以外の控除が何もなくても、所得ゼロとなり税金がかからないのです。
我々税理士事務所からすると何がややこしいかと言うと、所得税法に基づく基礎控除と
時限立法である措置法が二階建てになっていて、それぞれ階段状になっていると言う事です。
しかもそれが年度だけではなく、収入によっても控除があったり・なかったり、
控除によっては本人所得、扶養の方の所得、所得制限なし等様々なパターンがあるのです・・・。
さて昨年11月頃になると弊所からお送りしていた年末調整の書類も変わります。
昨年は下記の3種類です。
・扶養控除申告書
・社会保険料申告書
・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼年末調整にかかる定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書
最後の1つ、A4一枚に4つの申告書って詰め込みすぎでしょ!とツッコミを入れたくなるところですが、
今年は定額減税がなくなって一安心と思いきや、
代わりに「特定親族特別控除」と言うのが新設されたので、結局4つのままです。
ちなみに名称は以下のとおり。
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
もはや呪文ですね。。。
そもそも今回新しくできた「特定親族特別控除」は何かというと、
これは単純に企業の人手不足解消のための政策です。
物価高⇒親の仕送りが減る⇒子供がバイト頑張る⇒頑張りすぎて親の扶養外れて、親の税金UP(涙)
と言うのを何とかしようと言うものです。
対象が19歳~23歳までで、稼ぎすぎると親の扶養から外れてしまうと、本人課税と言うより、
親の税金が上がる!と言う事を恐れて働き控えする人が多い、と言う事で創設されました。
イメージとしては配偶者特別控除に近いですね。
※従来の配偶者特別控除は配偶者の給料が103万を超えても、
いきなり扶養控除がゼロになるわけではなく、段階的に控除が縮小します。
ザックリした説明をすると、今年から給与収入190万位までの方は、
昨年と収入が同じ場合、今年の年末調整の還付が増えるかも、と言う事です。
令和7年以降は非課税と所得控除のラインが異なるので、非常に複雑です。
例1)パート妻の給与収入160万・・・夫の所得税は扶養、住民税は課税
例2)大学生子供の給与収入150万・・・子供の所得税は非課税、住民税は課税
親は特定親族特別控除で63万控除OK
例3)シングルペアレントの大学生の子供の給与収入150万
子供は例2と同じ、親は63万控除OKだけどひとり親控除は適用不可
パートさんの160万の壁や学生の150万の壁はオプション位に思ってもらわないと
対応難しいですね。
そして200万~850万位の給与収入の方は、令和7・8年は上乗せ控除のために還付が多くなり、
令和9年からはまた下がる、と言う事です。
ちなみに令和7年も半分過ぎた今頃この話をするかと言うと、
この法律の施行が令和7年12月1日からなのです。
本来、上乗せ控除については
月々の給与から控除する源泉所得税に含まれなければいけないのですが、
施行日が12月1日なので、年末調整で対応することになり、
全国の税理士事務所が悲鳴を上げることになるでしょう。
そしてこの上乗せ控除が織り込まれた源泉所得税の税額表が
令和8年1月から適用されるので、来年からの税額表がかわり、
企業の給与担当者は悲鳴を上げ、さらに令和9年にはまた変更になるかもしれません・・・。
今回の改正により、本人の控除などは当然、家族の収入にも影響がある改正が多いので、
もはや完璧を求めるのは無理そうです。
扶養家族がいる方は、扶養家族の収入もきちんと把握しておいてくださいね。
それでは今日はこのへんで。