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2020年、日本政策金融公庫の新規開業実態調査から読み取れること

2020年11月に公庫のホームページにて「2020年度新規開業実態調査」が公表されました。

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_201119_1.pdf

この調査は毎年公表されているもので、新規開業実態調査から読み取れる公庫の創業融資の傾向についてご紹介していきます。

今回ご紹介する内容は「そもそも新規開業実態調査とは?」「読み取れる公庫の創業融資の傾向」の2つです。

 

新規開業実態調査とは?

まずは「新規開業実態調査というものがそもそも何なのか?」について押さえておきたいポイントについて説明いたします。

この調査は毎年実施されていて公庫ホームページにその結果が公表されています。

 

開業実態調査という名前からイメージできる通り、創業した事業者を取り巻く環境がどのようなものになっているのか、

その環境がどのように変化してるのかを把握するための調査になります。

始まりは1991年6月ので今回で30回目とかなり長く創業の実態を追跡しています。

この調査に注目すべき理由はただ1つ、それはこの調査の調査対象が公庫の創業融資先だということです。

ただし不動産賃貸業は除外してる点は注意が必要です。

 

つまりこの調査結果は公庫が実際に創業した企業の平均値を知ることができまして、

わざわざここから「私たちが創業融資をしてる事業者はこんな事業者なんですよ!」と教えてくれているわけなんです。

これから創業融資を受けてようと考えている人がこのデータを使わないのは損だ!ということが分かるんじゃないでしょうか?

 

公庫の創業融資の傾向

新規開業実態調査見るべき理由を理解したところで、

2020年度の新規開業実態調査から公庫の創業融資にどんな傾向が見て取れるのかご説明していきます。

まず開業時の平均年齢ですが、40歳代が38.1%と最も多く、次いで30歳代が30.7%という結果になっています。

開業の担い手が30~40歳代であることは分かりますがもう少しよく見てみると、

40歳代が占める割合が年々上昇傾向にありまして、30台は減少傾向にあります。

平均年齢も上昇傾向にあることからから、この創業融資を受ける年代がどんどん上がっている、つまり創業の高齢化が進んでいるんですね。

日本政策金融公庫の創業者向けの商品に「女性若者シニア起業家資金」がありますが、

そういう商品を積極的に適用する流れが少しストップしているということが推測できますね。

創業融資を受ける年代が上がっているのかという背景は、

営業経験の調査結果を見ればわかりますので、そこで詳しく説明していこうと思います。

 

次に必要経験のデータを見ていきましょう。

「斯業経験」という言葉に聞き馴染みがないかもしれません。

「斯業経験」とはこれから開業する事業に関連した業種での経験のことです。

この「斯業経験」という言葉は公庫独自の言葉ですのであまりに覚えなくても大丈夫です。

ただ公庫はこの斯業経験を創業融資の審査の重要なポイントの1つと捉えていることはぜひ覚えてください。

創業融資先のうち、斯業経験がある事業者は82%と高水準であり、ここから公庫は斯業経験を重視していることがわかります。

それでは「18%は斯業経験なしでも融資受けられているのか!それならばどうやったら18%の中に入れるだろうか?」

と考えるのはあまり意味がありません。

その18パーセントに入るための努力より、自己資金を蓄えながら経験を積む方が創業融資を受けるという点では近道であります。

 

そして斯業経験年数にも注目してみましょう。

斯業経験の平均年数は14.6年となってます。

結構長いなと思う方は多いのではないでしょうか?

ここから開業時の年齢を考えると14.6年の経験を積んだということは、大学卒業の方であれば30歳台後半ということになります。

先程説明した開業の平均年齢が上がっているという背景には、

経験豊富な創業予定者に対して公庫が融資する傾向にあることが推測できるということです。

また管理職経験ありは67.1%、管理職経験の平均年数は11.2年となっています。

創業すれば必ず必要となるマネジメント経験もポイントの1つになっていることが伺えます。

続いて開業費用のデータを見てみましょう。

開業費用の分布を見ると500万円未満が43.7%と最も高く、調査開始以来最も高い数値となっています。

また開業費用の平均は989万円と調査開始以来最も低い数値となっています。

これはまずは小さく始めるというスモールスタートが浸透していることも開業費用が減少している一つの要因だとは思いますが、

そもそも企業が大きくかからない ITやコンサル系での創業が増えていることの方が大きく関係してると思います。

 

最後に必要となる開業費用のデータを見て行きます。

開業時の資金調達額の平均は1,194万円と調査開始以来最も低いとなっています。

これは開業費用の減少と連動してると言えそうですね。

この項目で絶対に見て欲しいところが資金調達額の平均に占める自己資金の割合です。

自己資金の平均額は266万円と、資源調達額に占める割合は22.2%となっています。

「自己資金はどれだけ必要ですか?」というご相談を本当に多く頂きますが、

ここには公庫創業融資してる事業者の自己資金の割合の平均は22.2%だという事実が記載されているんですね。

ご自身の事業を始めるにあたって、必要な資金の22.2%ほどは自己資金を用意しておくことを1つの目安にしておきましょう。