中小企業の退職金原資の1つとして活用される中小企業退職金共済(中退共)の制度改正をご紹介いたします。
◆退職金のポータビリティ範囲の拡大
中小企業退職金共済法(中退共)の一部が平成28年4月より改正されます。
今回の改正は勤労者退職金共済機構における資産運用のリスク管理体制を強化し、制度のポータビリティの向上等を通じた事務、事業の見直し、加入者の利便性の向上等を盛り込んでいます。
◆改正の内容は
1. 資産運用のリスクの管理体制の強化のため勤労者退職金共済に厚労省大臣が任命する委員から構成される「資産運用委員会」を設置し資産運用の重要事項にかかる審議等を行う。
これについては先んじて平成27年の10月から施行されています。
2. 制度のポータビリティの向上を通じた事務、事業の見直し
(1)特定退職金共済事業からの資産移換・・・特定退職金共済事業を廃止する団体から事業主単位で中退共制度への資産移換を可能にする。
(2)確定拠出年金制度(DC)への資産移換・・・中退共に加入している事業主が中小企業者でなくなった場合、事業主単位で中退共制度から確定拠出年金制度(DC)(企業型)へ資産移換する事を可能にする。
(3)制度間通算における全額移換の実施・・・中退共制度と特定業種退職金共済制度間等の通算について、通算できる金額の上限を廃止する。
(4)企業間通算の申し出期間の延長・・・中退共に加入している従業員が転職等により中退共制度間等を移動した場合、通算の申し出期間は現行の2年以内から3年以内へ延長する。
(5)建設業退職金共済制度の退職金の支給方法の見直し・・・退職金が支給されない掛け金納付期間を現行の24月未満から12月未満へ短縮する。
(6)未請求退職金発生防止対策強化・・・勤労者退職金共済機構から住基ネットを活用して退職金未請求者の住所の把握を行えるようにする。
以上のように加入者にとっても利便性が向上する措置が盛り込まれました。